2006年7月24日月曜日

「国の危機を、内部の問題として捉えるのがサヨク。外部からのものとしてみるのがウヨク」(田島正樹)


uumin3 さん: 

田島正樹『読む哲学事典』(講談社現代新書)は面白そうですね。
 孫引きですが、
ここで、祖国が直面する危機を、その政治的共同体内部の問題として捉え、それ自身を、常に潜在的に 亀裂や対立を内包するものと見る立場を、左翼という。それに対し、祖国そのものは元来分裂を含まぬ統一体であるとみなし、それゆえ、祖国の危機はもっぱら 外からのもの、外敵によると見る立場を、右翼という。

(中略)

したがって、左翼と右翼が対立していると見る立場は、実はもっぱら左翼の見方であり、右翼は自分を右翼とは認めない。彼らは、自らを国民の立場、または中 道と主張するのであり、国民は本来、みな和して一体であり、それでもあえて対立する者たちは、敵にそそのかされ、操られた非国民と見なすのである。

(「保守主義と左翼」の項)
歴史的意味はちょっとおいておいて、こういうふうに作業仮説的に定義し直すのは刺激的な試みのように思います。
これ、すごく的確な指摘だと思う。

ウヨクは「祖国そのものを元来 分裂を含まぬ統一体と見なす」というのはその通りだと思う。これは農村的な「ムラ社会」意識から生ずる。散人の以前からの自問「なぜ農村住民はウヨクなの だろう?」という疑問に答えるものである。ようやく正解が見つかった!

Posted: Mon - July 24, 2006 at 08:26 AM   Letter from Yochomachi   名言(迷言)集  Previous   Next   Comments (5)

2006年7月16日日曜日

大泉一貫『ニッポンのコメ 崩壊に向かう複雑なその仕組み』……良書である!



今日読んだお奨めの本:
Amazon.co.jp: ニッポンのコメ—崩壊に向かう複雑なその仕組み: 本: 大泉 一貫: "1995年「食管法」が廃止され、それに代わって「食糧法」が制定・施行された。本書は、食糧法がコメの世界にもたらした変化を、生産現場・卸・小売・ 消費者の立場からレポートする。コメをめぐる複雑な状況の理解に最適な一冊。これから市場に求められるコメの条件もわかる。"
半世紀にわたる統制農政のおかげで複雑怪奇な仕組みになってしまった「ニッポンのコメ」。国民はまずこれを理解することから始めなければならない。この本を読め!

普通の人は、食管法と食糧法で、どこがどう変わったのかなぞ、全く知らないだろう。 コメをめぐる制度はあまりにも複雑だから、素人はほとんど議論にすら参加できない。だからその道の「専門家」と称する農協御用学者がやりたい放題に人を煙 に巻き自分の都合のいい方向に政治を左右することが出来るのだ。

この本の著者は、日本の農業経済と実践における主流の主流の学者。いわばインサイダーである。でも農協御用学者とは明確に一線を画している。説明はわかりやすく、主張にはすごい説得力がある。利権集団に騙されないためにも、この本は読んでおいた方がいい。

例えば、次のような疑問に著者は明快な説明をしてくれている:
  1. 食管法とはどういう背景で成立したか。なぜ戦後も維持されたのか。どうして機能しなくなったのか。
  2. 食管法に変わる食糧法は、食管法とどう違うのか。どこが同じなのか。その矛盾は何か。
  3. 食糧法でどの分野でどれほどの変化があったのか。ドラスティックな変化を経験した分野はどこか。全く変わらなかった分野とはどこか。
  4. どうして生産分野はまるで変わらなかったのか。どうして需要と供給で値段が決められないのか。
  5. どうして農村は政府の別働隊になったのか。生産調整はどうやって行われるのか。それが農民の行動基準をどう変えたか、などなど。

宝の山のような本。一度で紹介するにはあまりにモッタイナイから、別途、章ごとに何回にも分けて「さわり」をご紹介したいと思います。